読書日記 第24回 『僕らはいつまで「ダメ出し社会」を続けるのか』

こんにちは。広島で遺品整理業を営むはっぴいえんどの西本です。

今回の読書日記は荻上チキ著『僕らはいつまで「ダメ出し社会」を続けるのか』です。
この作品は2012年に発表されました。
もう10年経ったんですね。驚きです。

荻上チキさん。ご存知でしょうか?
フィールドワークなど具体的な社会活動を特徴とした評論家です。
TBSラジオの夕方のニュース番組「セッション」のメインパーソナリティーとしても有名です。

2010年代のはじめ、“若手論壇ブーム”というのがありました。
当時20代や30代だった若い言論人が脚光を浴びてメディアで活躍をしていた時期です。
震災後の暗い空気の中で、ポジティブに活動していこうという彼らの活躍が知識人界を活性化していた時期がありました。
有名なところで言うと、今でもテレビで活躍している古市憲寿氏もこの頃の若手言論人ブームから出てきている人です。
荻上チキさんもこの頃に古市さんたちと一緒にラジオに出ていたりして脚光を浴びた人物です。
古市さんはテレビで活躍していますが、荻上チキさんはラジオを主戦場に今でも大活躍されています。

この頃の若手言論人ブームが発進したメッセージは、「ただ批判するのではなく、具体的な行動・活動で社会を変えよう」というものだったと思います。今回紹介する本のタイトルそのものですね。

社会へのコミットの方法。
選挙やデモ以外の社会を変える方法。
技術、経済、政治、文化それぞれのアプローチ。
本の中で、問題は一点突破では解決しないことを示しています。

ダメ出しではない、“ポジ出し”の思想をチキさんは訴えます。
批判だけではダメだ。

例えば、病気を治すには、薬を投与する、手術をするなどの手法がありますが…一方でそれ以外の対処があって、食生活を改善する、生活リズムを変えるなど…直接病気にアプローチする以外の方法。これらを複合的に合わせて初めて効果的な治療となる。

チキさんは政策論においても同じことが言えるということを本の中で示唆してくれているのです。

単純に批判をするのではなく、具体的な行動をするための根拠を探そうと訴えて実際に動いてみる。

この視点は問題の解決法はもちろん、問題の本質を明らかにすることにおいてもとても大切なもので、感情論で物事に対処しないための重要な指摘です。


このチキさんの主張は私自身の社会人としての在り方に大きな影響を与えてくれました。
生きていれば様々な問題や不満が生じるものです。
得手してそういう問題や不満に対し、人は愚痴を言って終わり・・・なんてことがあります。

昔、観光業界にいた頃にこんな会話を聞いたことがありました。
「行政や旅行会社が広島をしっかりアピールしないから、うちのホテルにお客が来ないんだよ」
ああ、行政のせいにしている・・・・そんなに不満なら自分達が観光を活性化すればいいのに。
観光を盛り上げることは決して行政や旅行会社の専売特許ではありません。
一緒にやればもっと盛り上がるだろうなぁ・・・なんて思って、自分達でイベントを行ったこともあります。

これは荻上チキさんの思想の影響そのものだったと思っています。

具体論で勝負する。

精神論や井戸端会議で生産性のない会話をして終わることが多いのです世の中は。
それを“具体論”で打破する。
チキさんのこのような考え方が好きです。

ふと我に帰ると、この本は2012年の作品です。
10年前の作品です。

10年経って、何か状況って変わりましたか?

2022年になってあえてこの本を紹介する理由がそこにはあります。
2022年でも有効ですよね。

「ダメ出し」はやめましょうか。

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