読書日記 第30回 『おもちゃ 河井案里との対話』

こんにちは。広島で遺品整理業を営むはっぴいえんどの西本です。

今回の読書日記は常井健一著『おもちゃ 河井案里との対話』です。
21回目の読書日記で中国新聞取材班による『ばらまき』という本を紹介しました。
河井夫妻による大規模贈賄事件を追ったドキュメントだったわけですが、今回も河井夫妻事件について書かれた作品です。
インパクトのある表紙ですね。
今までたくさん本を買ってきましたが、表紙を見てこれが出版されたばかりの本だとは思わなかったですね。
表紙だけで凄まじい違和感がありました。

まず、“これって自費出版?”と思うほど“ダサい”。
どこかの運動団体が出版したチープな批判本か、どこかの宗教団体が出した啓発本なのかなと見間違いました。

本を手に取ると出版社は“文藝春秋”。

なら自分が知らないだけで、ずいぶん昔に出版された作品で『ばらまき』が広島で売れているっぽいから抱き合わせで本屋さんが並べているだけなのかと思いました。

しかし、これらの表紙から受ける失礼な印象からは全く違って、この作品は私が本屋で見かけた時期2月初旬に出版されたばかりの作品だったのです。

正直な話、この表紙で買いたいとは思わなかったです。
今までかつて表紙の印象で本を買う買わないと考えたことはなかったのですが、さすがに躊躇しましたね。
この気持ちは自分の中では客観視できないことは重々分かっているので分析のしようはありません。
皆様はどう思われるのでしょうか。

ただ、結果として買って読んだ理由はちょっと本をめくって、“もしかしたら答え合わせができるかもしれない”と思ったからです。

この作品は河井案里とその周辺を徹底取材されていてその生涯を垣間見ることができます。
もちろん夫である河井克行に関しても。
そして、この20年にも及ぶ広島政界についても緻密に取材されていました。

著者である常井健一さんはノンフィクションライターとしては評価も高く、凄まじい取材力で多くの作品を残されています。
その取材力が今作でも遺憾無く発揮されていて、夢中になって読みました。

私自身、ほんの少しこの物語に触れたことがあるので、多くの答え合わせができました。
まだ私自身若かったあの頃、自分の目からしか見ることができなかった景色が河井案里の目や河井克行を取り巻く状況を通して見ることができました。これは新鮮な景色でした。だからといって当時自分が抱いた印象や気持ちが変わることがありませんでした。この答え合わせにもなりました。

400ページ近くにわたる大作です。
このようなドキュメント作品ではその取材対象の人間性などがダイレクトに伝わり感情移入をしたりするのですが、この作品はそれとは大きく異なる違和感だけが残りました。それもまた独特の感覚ですごい読書体験だったなぁと思います。

この事件は今でもなお継続中で“歴史”にはなっていません。
この本で登場してくる人物たちが今、在宅起訴などでこれから裁判を控えています。

河井案里も含めてこの本に出てくる人たちの人生はまだまだ続くわけです。
どんな未来が待っているのか・・・それも知りたいなぁと思いながら、まだまだこの事件に注目したいと思います。

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