読書日記 第19回 『地震と独身』

こんにちは。広島で遺品整理業を営むはっぴいえんどの西本です。

今回の読書日記は2014年の作品ですが、とても印象に残っている作品を紹介します。
酒井順子著『地震と独身』です。
文学や音楽などのいわゆる表現は世界や歴史の中で起きる出来事の影響を受けて変化をしたり、新たな形が生まれたりするものだと思っています。

表現って人間が創るものですから、必ずと言っていいほど社会や世界の変化とは無関係ではいられないともののはずですし、表現を見る“観客”だって社会や世界の中で生きているので、“観客”の存在と表現者は切り離せないもののはずです。

その意味においてこの2年のコロナ禍も今後の表現のあり方に大きな影響を与えるには違いありません。
それが表現にとっていい形になることを私自身は心から祈っているのですが、暗い影があることは否定しません。

そんな社会にとって大きな出来事や事件が、表現に大きな影響を与えたという意味で2011年の“東日本大震災後”というのは特筆するものがありました。きっと来年の3月にはその辺りのことをこのブログで書くのではないかと予感しているのですが、今回はノンフィクションの読書作品を紹介することで、“震災後”ってどのようなものだったのかを考えてみたいと思います。

内容はこちらです。

独りだから、できたことがある。独りだから、諦めたことがある。あの震災で独身は何を考え、どう動いたのか。「家族の絆」が強調される一方でほとんど報道されなかった独身者の声を聞くため、作家は旅に出た。激務の末に転職、特技を生かして被災地に移住、震災婚に邁進、答えを求めて仏門へ――非日常下で様々な選択を迫られた彼らの経験から鮮やかに描き出す、独身と日本の「いま」。

東日本大震災後に語られたのは「家族の絆」でした。

震災を経て大切なものに気づいたこと。
それが儚くも失われてしまうものであるということ。
震災は人生を見直すきっかけとなったはずです。
斯くいう自分もそうでした。


そんな美談の裏で、忘れられていること。
語られていないこと。


あのとき“独身者”は何をしたのか。


絆が語られて続けた影で独身者の存在が完全に忘れられていました。
忘れられていることすら忘れていた。
それに光を当てたのがこの作品です。

震災はいろんな物語を浮かび上がらせましたが、まだまだ見えていないものがたくさんあります。
それは今もなおそうなのでしょう。
その事実をこの作品は品を持って告発しているようです。

何と言っても酒井さんの文体が素晴らしいです。
作品は、独身者たちが震災において何をしたのか、何を感じたのかをインタビュー形式で辿っているのですが、その文章から伝わる各人への“リスペクト”感。これがとても素晴らしい。
煽るわけでない、同情するわけでもない。ただ、尊敬の念を持って受け入れ、感謝しているのです。
著者のその姿勢がこの作品に品を与えています。

それは一方で影に隠れ続けていた“独身者”たちのプライドを静かに立ち上がらせてくれているようでもあります。


独身者たちが震災を経て何を思い、何をしたか。
何かを考えて、何かを感じて、何かを決断する。
それを覗くことがこんなに尊いとは。
自分のために生きて他者のために生きる。

独身者だからこそ出来たことがあり、救えた人生がありました。
その逆もしかり。

言葉を尽くしてもあまりに多彩な人生に対して私は首を垂れるしかありません。

「スゲーよ人生は」と言いながら自分も進むしかないと当時強く思いました。
あの時の想いが今日の自分の自分の在り方に繋がっています。


この作品は震災の記録としても、人生賛歌としてもずっと読み継がれていってほしいです。
とてもいい作品です。

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