読書日記 第16回 『千里眼』
こんにちは。広島で遺品整理業を営むはっぴいえんどの西本です。
今回取り上げるのは松岡圭祐著『千里眼』です。
ご存知の方はいらっしゃるでしょうか。
この作品は1999年に最初の作品が書かれたシリーズものです。
累計450万部を超えるベストセラーのミステリーエンタテイメント作品です。
房総半島の先にそびえる巨大な観音像を参拝に訪れた少女。突然倒れたその子のポケットから転げ落ちたのは、度重なるテロ行為で日本を震撼させていたあるカルト教団の教典だった…。すべてはここから始まった!元航空自衛隊の戦闘機パイロットにして、現在戦う臨床心理士岬美由紀の活躍を描く、千里眼シリーズの原点。
主人公は岬美由紀という元自衛官のカウンセラーの女性。 可憐な女性がアクションと心理戦を駆使しながらテロリストなど世界的組織と戦ってゆく痛快作品です。 私がこの『千里眼』に出会ったのが2000年。大学生の時でした。
この本を手に取ったときは写真にあるように映画化が決まっている・・・という状態でした。 いわゆる“メディアミックス”という戦略ですね。 今では書店に行けば必ずと言っていいほど“映画原作小説”みたいなコーナーがあって、映画と小説の相乗効果というのは当たり前になっています。 私にとって一番最初の“メディアミックス”作品はこの『千里眼』でした。 主人公の岬美由紀という人物はカウンセラーで人の心がどこまでも読める。人の心の些細な動きを表情などで読み取り、その能力が国家を救うことになる。そんな作品です。 作者の松岡圭祐さんが臨床心理学者だったこともあって、カウンセリングの記述がとてもリアルで読んでいると自分もカウンセラーになれるんじゃないかと勘違いするほど心理学の知識を得ることが出来ました。“眉の動き”で相手が何を考えているかなどがわかるなんて記述があるものですから、それを現実で確かめたくてカウンセラーもどきみたいなこともしていた覚えがあります。 映画は女優の水野美紀さんが主人公・岬美由紀役でした。 原作小説がカッコ良すぎて、楽しくて、それを興奮して読んでいるものですから、「映像化されたらどれだけ迫力ある作品になるのだろう」とワクワクして公開を待っていました。あれほど映画公開日が待ち遠しかった作品もなかったと思いますね。 そして、公開初日に映画『千里眼』を見に行って、その出来にとてつもなくショックを受けて帰るという・・・何も知らない学生にとって、とてもいい社会勉強になった出来事でした。 この『千里眼』ですが、映画の話は“いい思い出”としてそれはそれなのですが、作品としてはこれが本当にすごいと今でも思っています。なぜならば、この作品は1999年が最初です。 つまり“9.11”の同時多発テロより以前の作品なのです。 この作品は世界的テロ組織と岬美由紀の戦いが描かれます。 同時多発テロが起きた時はすぐにこの作品を思い出して、何かの予言か?と思ったことを覚えています。 映画の話も同時多発テロも2000年代初頭の話で今となっては遥か昔の思い出話ですね。 実はこの思い出は相当忘れていました。 ということはこの読書日記でも『千里眼』を取り上げるつもりは全くなかったことになります。 それがどうしてこのように取り上げることになったか?? 先日書店に行った時に、なんと新しい『千里眼』シリーズの文庫が並んでいたのです。 驚きましたねぇ。 今回取り上げている『千里眼』はシリーズ第1作で、その後2000年代を縦断するように12作発表され、さらに出版社を変えて10作発表されています。すごい数ですよね。それだけファンがついている作品であるということなのでしょう。 私自身は6作目あたりでリタイアしています。 理由ははっきりしていて、同時多発テロのせいです。 小説、物語は現実を遥かに凌駕して楽しませてくれるものという意識がどこかにあります。 それが同時多発テロによって、どこか限界を感じてしまったというのが読まなくなった理由です。 これは『千里眼』に限ったことではなく、いわゆるエンタテイメント小説自体から引いてゆくことになりました。 同時多発テロの超える想像力は果たしてあるのか?と大学生の自分は思ってしまいました。 同時多発テロはそれだけ大きな出来事だったわけです。 あれから20年近くが経ち、再び『千里眼』シリーズの最新作を書店で見つけてしまいました。 タイトルは『千里眼の復活』だそうです。 色々と懐かしく、そして思うところがたくさんありました。 同時多発テロ後、エンタテイメント小説を読むことを止めてしまった私。 あれから約20年。 今再びエンタテイメント小説を読んだ時、自分が何を思うのか・・・興味が出てきました。 であれば、再び読むエンタテイメント小説は『千里眼』であるべきなのかもしれません。
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